住宅会社選びをする中で、「省令準耐火構造」が標準仕様になっているハウスメーカーを多く見かけます。
私がハウスメーカー出身ですので、どのようなメリットがあるのか。よく理解していますが、ハウスメーカーを離れ、工務店や他設計事務所との付き合いが多くなり、あまり認知されていないことに驚きを覚えたこともありましたので、ここで簡単に解説したいと思います。
工務店や設計事務所の関係者の方々もよく理解しておかないと、お引き渡し段階で施主様と揉めるケースがありますので、ご覧いただければと思います。
省令準耐火構造のメリット
省令準耐火構造の最大のメリットは、火災保険の保険料が割引になることです。
私が建築業界に入った当初は、火災保険を35年一括で加入することができましたが、自然災害による保険料支払いの増加により、保険期間が短縮されていき、現在は5年ごとの更新が必要です。そのため、5年ごとに火災保険の更新手続きが必要となり、そのたびに保険料の支払いが発生します。
省令準耐火構造の建物であれば、火災保険の保険料が大幅に割引されるため、長期的には大きなコスト削減になります。省令準耐火建築物の場合、「T構造」になります。
たとえは、価格ドットコムで、以下の条件で火災保険料の比較を行いました。
・条件:大阪府・建物金額3000万円・家財500万円・地震保険あり(耐震等級3)
このように、T構造とH構造の保険料の違いが明確です。
お引き渡し時のトラブル
冒頭で触れた通り、お引き渡しの段階でトラブルが発生する可能性があります。お施主様が省令準耐火構造のメリットや火災保険の割引について知らない場合、保険加入手続きの際に割引が適用されないことを初めて知り、建築業者とトラブルになることがあります。
そのため、工務店や設計事務所の関係者は、省令準耐火構造のメリットを理解し、お施主様に対してもその重要性をしっかりと説明することが不可欠です。
省令準耐火の仕様
それでは次に、仕様変更が必要な部分について解説します。
3 第1項の「準耐火構造の建築物」とは、耐火建築物及び耐火構造の建築物以外の建築物で、建築基準法第2条第9号の3イ若しくはロのいずれかに該当するもの又はこれに準ずる耐火性能を有する構造の建築物として次に掲げる要件に該当するものをいう。
一 外壁及び軒裏が、建築基準法第二条第八号に規定する防火構造であること。
二 屋根が、建築基準法施行令第136条の2の2第1号及び第2号に掲げる技術的基準に適合するものであること。
三 前2号に定めるもののほか、建築物の各部分が、防火上支障のない構造であること。独立行政法人住宅金融支援機構に関する省令第39条第3項
具体的には次の3つが基準として規定されています。
【外部からの延焼防止】
①外壁・軒裏:防火構造*30分防火性能
②屋根:不燃材料*20分防火性能
【各室防火】
③天井・壁に石膏ボード
【他室への延焼遅延】
④ファイヤーストップ材
詳細については、以下のPDFをご参照ください。
300187905.pdf (flat35.com)
まとめ
いかがでしたでしょうか?
木造の非耐火構造には、構造材の柱や梁を現し(あらわし)にできるといったメリットもありますので、どちらが良いかはニーズに合わせてご選択いただければと思います。
「火災保険に差が出るとは知らなかった。」ということがないように、省令準耐火構造の重要性をしっかりと認識しておきましょう。
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