2024年、能登地方は立て続けに大きな自然災害に見舞われました。1月の大地震による建物倒壊や地盤の崩壊、そしてそれに続く9月の記録的な豪雨。地震による傷が癒えない中、能登を襲った大雨はさらなる被害をもたらしました。土砂崩れや河川の氾濫が相次ぎ、死者や行方不明者が出るなど、地域にさらなる苦しみが重なっています。
今回は、能登の震災とその後の大雨災害を通じて学んだ、地盤の重要性について、現地視察の経験と専門家から得た知見を基にお伝えしていきます。
地震という自然災害は防ぎようがないが、命を奪うのは「人災」である
地震という自然災害そのものは防げません。しかし、地震で命を奪う主な原因は、「建物の倒壊」です。これは、ある意味で「人災」と言えます。建物の倒壊により生き埋めになる人や、瓦礫が避難経路を塞ぎ、避難が遅れることが、死者を増やす原因です。
建築に携わる者として、建物の倒壊は絶対に防がなければならない問題です。そのため、耐震等級3の重要性や許容応力度計算の必要性を広めることも使命だと感じています。これらの対策は「大前提」として、建物に求められる最低限の性能です。
新潟と能登の現地視察から感じたこと
今年7月、私は新潟と能登の被災地を視察し、被災状況を自分の目で確認しました。建物倒壊の甚大さは予想していた通りでしたが、もう一つ重要な点に気づきました。それが今回のテーマである「地盤の重要性」です。
地盤の災害リスクとその対策
地震による地盤の崩壊や土砂災害、液状化、津波など、これらは自然災害に伴って発生します。一見すると、防ぎようのない災害のように見えますが、実際には違います。
これらの災害は、特定の場所で繰り返し発生することが多いです。過去の災害履歴や、地盤の形成過程を調査することで、災害リスクをある程度予測できます。つまり、災害が起こりやすい場所を事前に把握し、対策を講じることが可能です。
専門家から学んだ地盤の重要性
被災地視察後、地盤の専門家である西村さんと横山さんから学ぶ機会がありました。お二方の話を通じて、地盤の特性やリスクを理解することが、建物の耐震性向上だけでなく、災害そのものの被害を軽減するために非常に重要であると再認識しました。
株式会社伸洸 代表取締役
西日本住宅地盤事業協同組合 理事長
西村伸一氏
阪神淡路大震災・東日本大地震・熊本地震・能登半島地震などの大規模被災の経験・現地調査を活かして、さまざまな工法や取り組みを行う地盤業界のプロフェッショナル。
株式会社Be-Do会長
株式会社KULOCO技術顧問
だいち災害リスク研究所所長 博士(理学)“地盤ドクター”
横山芳春氏
地形と地質、地盤災害の専門家。災害発生時には速やかに現地入りして被害調査を行い、テレビなどで報道解説をしています。広島土砂災害や熊本地震など、さまざまな災害で現地調査を行ってきたプロフェッショナル。
過去の震災から学ぶ
西村さんの話で興味深かったのは、メディアで取り上げられる被害だけでなく、どの震災も似たような被害を受けているという点です。例えば、阪神淡路大震災では高速道路の倒壊、東日本大震災では津波被害がメディアで注目されますが、実際には地盤崩壊や液状化なども、すべての震災で共通して発生しています。
震災での教訓を忘れないために、各地で震災アーカイブが作られています。そこから写真を拝借してきましたので、各震災の被害状況を確認してみてください。
阪神淡路大震災(1995年1月17日 5時46分)
高速道路の倒壊や大規模火災に加え、地盤崩壊や液状化も発生しました。
【出典:朝日新聞デジタル/フォトギャラリー | 1.17 再現-阪神・淡路大震災】
熊本地震(2016年4月14日 21時26分)
熊本城の被害や住宅の倒壊だけでなく、火災や地盤崩壊も多数確認されています。新耐震基準の住宅や、耐震等級2の住宅も倒壊し、衝撃を受けました。
【出典:熊本災害デジタルアーカイブ】
地盤の理解と対策
地盤を理解するためには、土の種類やロケーションを把握することが重要です。
土の種類と特徴
土は粒子の大きさの違いによって、次のように分類されます。
・粘土
・シルト
・砂
・礫(れき)
・岩
さらに、植物の遺骸が堆積した有機質土や腐植土、泥炭などもあり、これらの土質によって地盤の性質が変わります。例えば、シルトや砂は液状化を起こしやすい一方、腐植土は不動沈下が発生しやすい土地です。事前の地盤調査で土質を把握することは、災害対策に不可欠です。地盤調査前でも、近隣データなどから予測することは可能です。
ロケーションの重要性
山の近くでは切土や盛土がある箇所、川の近くでは旧河道部分、工場の近くでは井戸水の跡など、地盤リスクが高まる場所があります。土地の成り立ちを確認し、適切な対策を講じることが重要です。
次回のブログでは、横山さんに教えていただいた「土地の成り立ち」や「災害リスクの確認方法」について、さらに詳しくお伝えします。
地盤や家づくりに関する疑問やご相談など、いつでもお気軽にお問い合わせください。
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