昨日はミライの住宅「空調設計講座」の第5回講義が開催されました。
今回は滋賀県栗東市の夏見工務店・夏見さんのご自宅にて開催。
当日は寒波影響で、朝6時ごろの気温はー2℃。それにもかかわらず、無暖房でも27℃(18人の内部発熱あり)、パッシブハウスの性能の高さを実感しました。
講義ではZehnder(ゼンダー)の換気システムの実測も行い、ほぼカタログ値通りの換気風量で、非常に優れた換気システムであること確認しました。
今回は、講義の中でも特に興味深かった「換気システム」についてまとめます。
24時間換気の基礎知識
建築基準法では、建物の居室に24時間換気の設置が義務付けられています。
2時間に1回、室内の空気を入れ替わる換気量が必要です。
必要換気量の計算
例えば、30坪(100㎡)の住宅で天井高2.5mの場合
100㎡×2.5m=250㎥
250㎥×0.5回/h=125㎥/h ←必要換気量
換気方式の種類と比較
換気方式は以下の3つに分類されます。
①第1種換気
②第2種換気
③第3種換気
一般的な住宅では主に1種換気と3種換気が採用され、1種換気は熱交換型が使われることが多いです。
では、この2つの換気方式ではどちらが良いのでしょうか?
第3種換気
冬場、第3種換気では、冷たい外気がそのまま室内に入り、暖かい空気が排出されます。
例えば、
●屋内
温度22℃・湿度40%・比エンタルピー13.0Wh/㎥
●屋外
外気温8℃・湿度37%・比エンタルピー4.8Wh/㎥
※エンタルピー:空気が持つ熱量

この場合、
換気による熱損失=
比エンタルピー差8.2Wh/㎥×必要換気量125㎥/h×24h/日=24.6kWh/日
これをCOP4.0のエアコンで補う場合:
暖房費=24.6kWh÷4.0×電気代35円/kWh(仮定)=216円/日
※COPとはCoefficient of Performanceの略で成績係数を示す。成績係数とは消費電力1kWあたりにどれだけの能力を発揮することができるかを示す。
第1種熱交換換気
そこで、捨てる空気から熱だけを回収し排熱ロスを少なくする熱交換換気が流行っています。
同条件で熱交換率75%を使用した場合。
熱損失=
24.6kWh/日×75%削減=6.15kWh/日
→暖房費54円/日

この時点では暖房費が1/4になると思われがちですが、
実際にはそうではありません!!!
実際の暖房コスト比較
①換気扇動力 ※換気動力は24時間365日止まらずに運転しています。
熱交換換気
消費電力70W
70W×24時間=1.68kWh
電気代35円/kWhの場合 → 換気扇動力費59円/日
第三種換気
消費電力20W
20W×24時間=0.48kWh
電気代35円/kWhの場合 → 換気動力費17円/日
②熱損失の影響
住宅の外皮(UA値)による熱損失は
UA値0.5W/㎡k×外皮面積270㎡×温度差16℃×24時間
=51.8kWh/日 → 暖房費454円/日
一日に掛かる暖房コストの合計は
熱交換換気

第三種換気

その差は1日120円の差。
熱交換換気は本当にお得なのか?
●熱交換換気の初期コスト → 約150万円アップ
●1日120円の節約 では、約34年間でようやく回収
また、 暮らし方によっても効果は変わる ことに注意が必要です。
例えば、未使用の部屋の暖房をオフにする ような住み方をすると、熱交換の効果が低減します。
熱交換換気の場合

3種換気の場合

その差はおおよそ120円/日→94円/日
●1日94円の節約 では、約43年間でようやく回収
一番の熱損失要因は「外皮」
熱交換換気にかける初期投資を断熱強化に回した方が効果的。
例えば、UA値0.5W/㎡k(6地域の断熱等級5・ZEH水準)
→ 0.4W/㎡k(6地域の断熱等級6・HEAT20G2水準) に強化した場合(第3種換気)

UA値0.5の熱交換換気(換気初期投資150万円)VS UA値0.4の第3種換気(断熱初期投資150万円)

さらに冷暖房しない日の差額

熱交換換気を導入した方が光熱費が上がるという結果に。
また、熱交換換気のメンテナンスコストもかかります。
更に・・・
キッチンのレンジフードや、トイレの換気扇をつけていると、実質の熱交換率は更に悪くなります。
75%の熱交換が50%まで低下することも多いです。
厳密には、玄関ドアの開閉も熱交換効率は下がる要因になります。
最近では、ガス式乾燥機「乾太くん」の導入も増えていますが、排気量が多くなる設備なので換気バランスを崩す可能性が高いです。
最適な換気は?
一般的には、「第一種熱交換換気を導入すれば、経済的で快適性が向上する」 と思われがちです。しかし、実際にはそう単純な話ではありません。
換気方式を選ぶ際には、
・どの地域に住むのか?
・どんなライフスタイルなのか?
・住宅の性能は?
といった視点を持ち、バランスの取れた設計をすることが大切です。
今後の住宅設計では、「断熱+換気+冷暖房計画」を一体として考える視点 が求められます。
空調講座でしっかり学び、最適解を見つけ提案できればと思います。
その他、湿気貫流率のヤバい話もありましたが、それはまたの機会にまとめたいと思います。
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