一般の方が「構造計画」を理解し、間取りをチェックできる時代へ

最近、佐藤さんの構造塾YouTubeで「構造計画ルール」について積極的に発信されています。
構造計画という少し専門的な言葉を、家を建てる一般の方々にまで広めていこうという取り組みです。

実際、2020年頃から「耐震等級3」や「許容応力度計算」といった言葉を繰り返し発信し続けてきた結果、今では一般の方でも家を建てる際にこれらを気にかけるのが当たり前になりつつあります。

そして次は、「間取りをつくるときに構造計画ルールに準じているか」を、一般の方自身がチェックできる時代へ。

こうなれば、家を建てたいエンドユーザー自身が

「この間取り、構造計画的に大丈夫ですか?」
とハウスメーカーや工務店、設計事務所に自然に質問できるようになります。

これは家づくりにとって非常に良い流れであり、構造的に無理のある間取りは市場から減り、構造計画をきちんとできない会社や実務者は、学ばなければ市場価値を失っていくことになるでしょう。

野澤さんの事例:構造計画ルールが活きた間取り

構造計画を世に広めるため、毎月一度、構造計画スペシャリストのミーティングが行われています。
本日はその中で、野澤工務店の野澤さんのプランニングから学んだ事例を紹介します。

① 2階リビングの家

野澤さんのプランはいつ見ても構造区画が田の字でとてもきれいです。
柱が4P以内に配置され、耐力壁もバランスよく配置されています。

このプランでは、両サイドに耐力壁が多く中央が少ないため、屋根の水平構面にやや厳しさがあります。
そのため、登り梁を使い屋根面でしっかり地震力を流すことで、構造バランスを保っています。

こうした点は最初から把握していれば無理なく納められ、予算管理もスムーズです

構造計算の重要性

ここで特に注意したいのが「構造計算」の有無です。

多くのプランでは、許容応力度計算などの詳細な構造計算を行わない限り、屋根の水平構面まで検討していないケースがほとんどです。
そのため、設計後に構造計算を行って初めて

「垂木や火打ちだけでは力を流せず、登り梁が必要だった」
とわかり、その時点でコストアップにつながるということが少なくありません。

だからこそ、最初から構造計画ルールに沿って間取りを考え、構造計算まで含めて計画することが、余計なコストや後戻りを避ける最大のポイントです。

また逆に言えば、構造計算をしないと本来地震力をうまく流せない家が、そのまま建ってしまうという恐ろしさもあります。

② 小さい家(24坪)

こちらのプランも、構造区画がきれいに揃っており、とてもバランスの良い設計になっています。
性能を落とさずに予算を抑えるため、コンパクトに計画しつつ、軒高を低く抑える工夫がされています。

今回の図面はファーストプランで、これから修正を加えていく段階ですが、
2階の面積をもう少し小さくして大屋根にする提案を進めたいとのことで、現在断面計画を検討中です。

検討した断面のパターン

①現状の断面

2階階高を低く設定し、登り梁を使って勾配天井とすることで、空間を広く見せています。

②水平梁の上から登り梁

2階の床面積を減らし(低い部分は吹き抜け)、空間の広がりは確保しつつコストダウンを狙う断面です。

③水平梁とは別ラインから登り梁

梁と桁の高さが異なるため難易度が高く、構造的に難しいため今回は採用を見送りました。

最終的に、②の断面をベースに進める方向で検討することになりました。

耐力壁の剛性について

次のステップとして、耐力壁の剛性(硬さ)の話に移りました。
同じ階で耐力壁の高さが異なると剛性が変わるため、バランスよく配置するには注意が必要です。

  • 高さの低い耐力壁:剛性が高い(硬い)
  • 高さの高い耐力壁:剛性が低い(柔らかい)

重心(重さの中心)と剛心(硬さの中心)をできるだけ近づけることで、地震時にねじれにくい安定した構造になります。

今回のプランでは、剛性の検討を行った結果、バランスの取れた計画になっていることが確認できました。


こうした剛性や構造のバランスまで、初期のプランニング段階からきちんと検討しておくことで、後々の無理のない構造計画、コストコントロール、そして安心して暮らせる家づくりにつながります。

水平構面のライン
耐力壁の高さを揃えることで、より構造がシンプルで安定する

構造計画は「見えないけれど最も大事なもの」

間取りやデザインは目に見えてワクワクしますが、構造計画はその家の一生を左右する部分です。

「耐震等級3だから安心」「許容応力度計算をしているから大丈夫」というだけではなく、

  • 構造区画がきれいにできているか
  • 上下階の柱や耐力壁がしっかり通っているか
  • 屋根や床の水平構面が無理をしていないか

こうした点を丁寧に計画することで、必要以上に大きな梁や柱を使わずに済み、構造的に無理のないプランになるため、結果として余計なコストを抑えることにもつながります

さらに、これらのポイントを少しでも一般の方々が知るようになれば、
おかしな間取りは自然と市場から減り、結果として長く安心して暮らせる家が増えていくはずです。

もちろん、他にも防湿や断熱、通気など大切なことはたくさんありますが、本日は構造を中心にお話しさせていただきました。

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