構造計画は、設計が進んでから整えるものではなく、設計初期の段階で大枠が決まるものです。
そのため、意匠計画と構造計画をどのように整理していくかは、設計の質を左右する重要なポイントになります。
今回のミーティングでは、実際の設計事例をもとに、構造計画ルールの考え方や設計への落とし込みについて意見交換が行われました。その中から、印象に残った内容を整理してまとめます。
冨田さんの事例
今回の事例は、冨田さんによる設計ということもあり、構造計画が非常にきれいに整理されています。
当初は在来工法で計画されていましたが、途中でツーバイフォー工法へ変更しています。
しかし、もともとの構造計画が整っていたため、大きな間取り変更を行うことなく工法変更に対応することができています。
構造計画を設計初期から整理しておくことで、こうした工法変更にも柔軟に対応できる好例と言えます。
建物計画
・横浜市
・50代男性の一人暮らし
・木造2階建て
1階
・LDK
・水廻り
2階
・寝室
・書斎
・予備室
空調計画として
・小屋裏エアコン
・床下エアコン
を採用しています。
敷地条件と計画変更
当初は在来工法で計画していました。
しかし敷地の西側には高さ約7mの崖があり、
- 開発許可は取得済み
- ただし検査済証がない
という状況でした。そのため安息角の検討が必要となり、結果として高基礎とする必要がありました。

高基礎+付加断熱の施工問題
今回の住宅は
- 高基礎
- 付加断熱
を採用しています。
在来工法の場合、施工手順は
- 高基礎をつくる
- 柱を建てる
- 構造面材施工
- 付加断熱施工
という流れになります。施工のおさまりが非常に難しいという問題がありました。
パネル工法も検討
当初はパネル工法も検討しました。しかし
- 敷地の高低差
- 電線の状況
などの理由で、パネルの搬入・施工が難しいことが判明しました。
ツーバイ工法へ変更
最終的にはツーバイフォー工法へ変更。
理由は、現地で壁パネルを制作し、付加断熱まで施工してから建て込むことで高基礎と密着させた施工が可能になるためです。
結果として
ツーバイに変更して困ったことは特に無かった
とのことでした。
ツーバイフォーの構造計画ルール
ツーバイフォーでは40㎡以内の構造区画に収めることが基本となります。構造計画では以下の壁の種類があります。
耐力壁
・水平力を負担
・鉛直荷重も負担
支持壁
・鉛直荷重のみ負担(水平力は負担しない)
間仕切り壁
・水平力・鉛直荷重どちらも負担しない
支持壁のポイント
支持壁には鉛直荷重を受ける役割があるため
・壁の下に土台・基礎が必要
となります。
2階の場合は下階の梁で受ける形になります。
スケルトンインフィル設計との関係
構造計画ルールをスケルトンインフィル設計として考える場合、支持壁を無くすことも有効です。
そうすると
・基礎立上りが減る
・空間の自由度が上がる
というメリットがあります。
ただし梁のサイズが大きくなる可能性があるため状況によっては支持壁を入れる判断も必要になります。
在来工法との関係
この構造の考え方は
・在来工法
・ツーバイフォー
どちらでも共通しています。むしろ
構造計画ルールの基本はツーバイフォーの考え方をベースにしています。
今回の物件
今回の住宅では梁が大きくなりすぎるため
最終的に支持壁を入れる計画としています。

中村さんの相談事例
ある住宅会社の事例です。
その会社は
・不動産事業を大きく展開
・住宅設計は外部設計事務所へ外注
という体制です。
普段から構造計算は実施している会社です。
構造塾ルールを採用したい
その住宅会社の社長が構造塾の構造計画ルールを採用したいと考え、
モデルハウスの設計を進めています。
しかし問題があります。
構造計画が厳しい
現在の図面では構造計画の条件が厳しく
・元の図面をベースに修正している
・しかし成立が難しい
状況です。
そのため
やり直した方がよいレベル
という判断になっています。
意匠設計者の理解
この会社では外注の意匠設計者が設計しています。
構造計画ルールについて佐藤さんからすでにレクチャー実施済みですが
まだ十分理解されていない状況とのこと。
過去の図面よりは改善されていますがやり直しレベルという評価です。
構造計画を整える
構造計画の基本ステップ
ステップ①
構造区画を決める
ステップ②
耐力壁線と構造区画を揃える
この2つが揃うと基礎区画がきれいに整理されるようになります。
スケルトンインフィル設計は難しくない
基本は
- 構造区画をつくる
- 耐力壁線と揃える
この流れです。慣れてくると
設計精度は自然に上がっていきます。これらができるようになるとスケルトンインフィル設計も比較的容易になります。
最大のハードルは「素直さ」
構造区画をつくるうえでの最大のハードルは素直にルールを受け入れることとのことでした。
設計チームが10人いた場合
- 若い設計者は理解が早い
- 一番難しいのは設計リーダー
という傾向があるそうです。理由はこれまでの設計経験が邪魔をするためです。
佐藤さんの最近の課題
最近感じている問題として成立しないプランが多いという話がありました。
構造設計者が力技で成立させることは可能ですがそれにはリスクがあります。
構造計算ソフトの限界
構造計算ソフトは万能ではありません。
特に
- グレー本のルール外形状
- 応力の複雑な流れ
の場合安全性を完全に確認できない場合があります。
責任の所在
もし問題が起きた場合責任は誰に来るのか。最終的には100%構造設計者になります。
そのため
無理なプランには極力触らない方が良い
という判断になるとのことでした。
まとめ
今回のミーティングでは
- 工法選定の判断
- 構造計画ルールの実務
- 意匠設計との連携
- 構造設計者の責任
など、実務的な課題が多く議論されました。改めて感じたのは構造計画は後から整えるものではなく、
最初から設計に組み込む必要がある
ということです。
意匠・構造・施工が
同じ方向を向いて設計を進めることが、安全で合理的な住宅づくりにつながると感じました。
