最近、「GX志向型住宅」や「BEI(Building Energy Index)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。脱炭素社会を目指す中で、住宅の省エネ性能はますます重要視されていますが、その指標として使われるBEIとは一体何なのか?また、それをクリアすれば本当に「エコな住宅」と言えるのでしょうか?
今回は、BEIの概要とGX志向型住宅の位置づけ、そして私たちが見落としてはいけない“本当に大事なこと”について考えてみたいと思います。
BEIとは何か?
BEI(Building Energy Index)とは、住宅や建築物のエネルギー性能を数値で評価するための指標です。
具体的には、「基準一次エネルギー消費量」に対して、実際の設計に基づいた「設計一次エネルギー消費量」がどれだけ少ないかを示す比率で、次の式で表されます:
BEI = 設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量
この値が 1.0未満であれば、省エネ基準をクリアしているとされます。値が小さいほど、より省エネ性能が高い建物ということになります。
GX志向型住宅とは?
GXとは「グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)」の略で、エネルギー転換や脱炭素に向けた取り組み全般を指します。GX志向型住宅とは、そうした文脈の中で、脱炭素化や再エネ活用を前提とした未来志向の省エネ住宅のことを指します。
国もこの分野に力を入れており、補助金や優遇制度が用意されている場合もあります。その評価軸の一つとしてBEIが使われるのです。
BEI基準(2025年現在)
国の省エネ基準:1.0以下
長期優良住宅・ZEH基準:0.8以下
LCCM住宅基準:0.75以下
GX志向型住宅基準:0.65以下
地域版省エネ住宅基準(東京ゼロエミ住宅):0.55以下
高効率設備でBEIはクリアできる。でも…
ここでひとつの疑問が生まれます。
BEIの数値を改善するために、高効率な設備(エアコン、給湯器、LED照明など)を導入すればいいのでは?
はい、その通りです。多くの場合、これらの最新設備を導入すれば、BEI 1.0未満を達成することはそれほど難しくありません。
しかし——。
それだけで本当に「快適で、環境にやさしい家」が実現するのでしょうか?
本当に重要なのは「断熱」
高効率な設備は、確かにエネルギー消費を抑える効果がありますが、それだけに頼る家づくりには落とし穴があります。なぜなら、住宅そのものの基本性能(特に断熱性能)が低いままだと、根本的な解決にはならないからです。
断熱が不十分な家では、
- 夏は冷房をしてもすぐ暑くなる
- 冬は暖房をしても足元が寒い
- 光熱費が結局かかる
- 結露やカビのリスクが高まる
といった問題が起きやすくなります。
つまり、「エネルギー効率のよい設備」よりも前に、「エネルギーロスしにくい家」をつくることこそが、GX志向型住宅の本質なのです。
結論:BEIをクリアすることが目的ではない
BEIの数値だけに着目して、高性能な機器で帳尻を合わせるような家づくりは、本来のGX(脱炭素)という目的から逸れてしまいます。
本当に環境にも人にもやさしい住宅とは、断熱・気密といった“見えない基本性能”を高めたうえで、適切な設備を導入していくこと。
BEIはあくまで指標のひとつに過ぎません。数字の達成ではなく、「住まいの質」と「エネルギーとの付き合い方」を見直すことが、GX志向型住宅における“本当に重要なこと”なのです。