2024年4月からスタートした環境塾。早くも先日で8回目を迎えました。
8回目の環境塾は、新建新聞社の三浦社長による住宅最新トレンドの情報共有。
とても参考になる話が伺えて、改めて環境塾の、そして自分の立ち位置を確認、今後の役割を把握することができました。
三浦さんの話の前に、環境塾の塾生を代表して、M’s構造設計の高中さんが今までの取り組んできた内容を発表。さすが、高中さん。わかりやすく綺麗にまとめていただいていたので、今回はその内容を。自分の整理のためにブログ記事にしたいと思います。
「環境塾」とは?
目的
プランニング+構造+環境を3次元で一手で扱える設計者の育成
住まいが備えておくべき5つの力の中でも、特に重要な3つをしっかり取り組めるように
「5つの力について」
①間取りとデザインの力 ②構造の力 ③エコの力 ④長持ちする力 ⑤豊かになる力
この内容は私のHPの内容にも少し反映させていただいています。
手段
様々な3次元ソフトを使い、実務において必要なツール、検討方法を学ぶ。
アーキトレンドを軸に、QPEX、Rhinoceros/Grasshopper+ClimateStudio(熱・光解析)、FlowDesigner(温度分布・気流)、ホームズ君パッシブ設計
目標
「健康快適で電気代も安心な、シンの脱炭素住宅をすべての人に」
取り込む仲間を増やし、学びを広く届ける、日本中の家が良くなるように。
それぞれの地域の政策・問題解決のお手伝いを
期間
環境塾の期間は2年。2年間学んでいきます。
4月~7月は、東大の学生スタジオ課題にも参加させていただきつつ、シミュレーション(SIM)ツールを学ばせていただきます。
環境塾編 4月~7月
第一回:パッシブ設計の実践をレクチャー
第二回:アーキトレンドZEROの操作レクチャー
第三回:QPEXの入力講習
第四回:前先生による講義
第五回:開口部の熱性能評価方法について
第六回:学生課題(Rhinoceros)の質疑回答
第七回:windeyeの入力、高断熱木造賃貸について
第八回:断熱や空調等の最新動向に関する情報提供
スタジオ課題編
学生のスタジオ課題に参加(学部生・院生の授業)
前研究室+アルゴリズムデザインラボ(重村先生)の共同開催
ツール:Rhinoceros/grasshopper+ClimateStudio、FlowDesigner
実務者が普段使わないツールについて学んでいます。
今後の予定
8月以降は実践編に突入
パッシブ標準プランの作成、熱・光・気流SIMの実施
8月6日 中間発表
実際に建設されるモデルハウスでのパッシブ設計を実施
3月 環境塾報告会
2年目~
塾生メンバー
高中さんの発表資料引用。よく見たら最新情報に更新してくれてる(笑)ありがとうございますm(__)m
それでは、第一回から振り返りをしていきます。
~環境塾編~
第一回 神長先生による実践レクチャー
「環境塾」オープンスクール開講初日。
初日は神長さんに普段設計している様子を見せていただきました。
ツールは社員のようなもので、それぞれのツールの特徴を目的に合わせて使い分けているとのことです。
ゴールはUA値ではない
無暖房時での室温を18℃とすること
各月の冷暖房使用量を把握すること
UA値を超えた本質的なゴールを掲げ、得たい結果を得るためにSIMツールを活用する
実測値との比較
シミュレーション結果との比較
狙った通りの結果になっているか、SIMの妥当性を確認する
実測と改善
SIM結果と実測値を比較することで、モデルの精度を検証し、より正確なSIM環境を構築できることが重要
第二回 松谷講師によるアーキトレンドZEROの使い方
今回の環境塾で多大なるご支援をいただいている福井コンピュータのアーキトレンドの入力方法についてデモンストレーションを行っていただきました。アーキトレンドフルオプションを使えるようにしていただいており、この機会に覚えていきたいと思います。
第三回 神長先生によるQPEX入力方法
第一回目の環境塾では神長さんの大まかな実務の流れを見せていただき、QPEXはレシピのようなもの。と教えていただきました。レシピを理解することがまず初めに私たち塾生に課せられた課題です。どうすれば冷暖房負荷が下がるか、感覚を鍛えるためにQPEXを習います。ちなみに課題は、等級4,等級5、等級6のQ1レベル1~4までの6通りの仕様を作ること。いろいろ触っているとどの部分が弱いのか、断熱やサッシの変更がどこまで効果が現れるのか。なんとなく分かってきます。
第四回 前先生の講義
普段いろんなところでセミナーしている内容を、裏情報も交えながら気さくにお話しいただきました。
国交省が作ってしまったものをどう使うか。また、評価されないものはどう判断するか。
前先生に解説いただきながら、今後議論していかないといけない内容についてお話しいただきました。
国が整備しているもので使えるものは使う
〇断熱等級6・7(国交省は断熱等級6の普及目標は無いとはっきり断言している)
〇給湯設備、太陽光発電量などのWEBプログラムの活用
整備されていないものは、独自に評価が必要
〇断熱による冷暖房の省エネ効果が出ない
〇WEBプログラムのバックデータが等級3~5+エアコンの設定変更が出来ない
→安全側(増エネ)の評価結果になる
〇庇の効果係数fC/fHの定数法は良くない
→夏の冷防負荷を安全に評価してしまう、窓の遮蔽型に誘導してしまう結果に(冬の日射取得が減り、暖房負荷が増える)
〇除湿について
〇エアコンの高効率運転と制御
UA値は多少気にしない
〇UA値は結果論
〇温暖地なら窓周りの変更が少ないカジュアル付加断熱、断熱等級6以上を推奨→どうつくっていくかは検討課題
大目標:「温湿度、空気質、電気代」の3つのバランスが十分で、リーズナブルで長寿命
〇「いつでもどこでも健康・快適」な環境を考えると、24時間空調を前提に
〇コストをあまりかけずに良い環境を確保する
新しい「パッシブ標準プラン」を作成
アーキトレンドやライノセラス、クライメイトスタジオなどをSIM回しながら、塾生でつくる。
第五回 清水講師による開口部の熱性能評価方法について
窓の評価方法が色々あり、ややこしいのでYKKの清水さんに整理いただきました。
どの値を使うのか。これは各々で検討が必要です。
開口部の区分
窓扱いになるのか、ドア扱いになるのか
開口部の熱還流率(Uw値)と窓の日射熱取得率(ηw値)
①仕様値
②簡易的評価
③計算値(windeye)
④自己適合宣言書・附属書の値
windeyeの入力方法
これが一番正確なのだが、、、ややこしい。後日、改めて説明いただくことに。
第七回 前先生による高断熱木造賃貸について
前半はwindeyeの入力があまりにも複雑でしたので、再度要点を抑えて解説いただきました。
後半は前先生の木造賃貸の高断熱化の重要性、非住宅への取り組み等のお話を。
windeye
入力方法
①YKK対象製品のガラス仕様の選択方法
②改修二重窓の操作方法
③遮蔽物設定の操舵方法
省エネ基準地域区分別サッシ出荷比率
資料みせられませんが、
5・6・7地域のサッシ割合が…
高断熱木造賃貸
6/27断熱・省エネ性能計算レクチャー
木造賃貸において高断熱化の重要性
戸建てが縮小傾向の中、培った技術を賃貸に
埼玉断熱改修会議の話
自治体で。
塾生が今後、地元のお手伝いが出来れば。
学校建築脱炭素研究会の話
非住宅の断熱改修。工務店の仕事。
地域を盛り上げる。協力体制の構築。
第八回 三浦社長による住宅トレンド情報提供
今の工務店の現在地。断熱・空調・換気を取りまとめた資料の共有と、
単に共有するのではなく、それぞれ塾生が自分はどう取り組んでいるのか、どう考えるのかを議論。
活躍している工務店の標準仕様について。
対談を通じての考え方の違いについて。
コストダウンの方法。などなど…多様な考え方があり非常に興味深い内容でした。
最後に神長さんの実例を取り上げた内容を。
神長さんの仕様の場合…
どの家も、同じ環境(室温・絶対湿度)を作ることができている。実測データを見せていただきましたが、宇都宮5地域・佐野6地域の全く同じ、エアコンの消費電力。。KAMI式恐るべし。
~学生スタジオ課題編~
環境塾と同時並行して行っている、学生向けのスタジオ課題。
学生メインになりますが、ソフトの使い方を学んでいます。
重村先生によるライノセラスの講義
日本とアメリカの環境に対する意識の違い
ボストンなどでは、住宅の「光熱費を一万円以下に抑えるように」と州から設計指針が出ている。
アメリカでの視点
Design is Adovocacy設計は社会に影響を与える行動
その設計がどのように社会へ良い影響を与えるのかを考える
BIMや3次元設計を利用した環境SIMを当たりまえに
環境SIMは今や、そのアイデアが面白いというだけではなく、
環境SIMは、とても重要な設計プロセスの要素である
UDI(有効昼光照度)
居住者にとって有効な昼光の量で、まぶしさを引き起こしたり、視覚環境を乱すことなく空間に導入できる昼光レベル
ASE(年間日光暴露量)
まぶしさや冷却負荷の増加を引き起こす可能性がある、直射日光 (年間 250 時間以上の占有時間で 1000 ルクス以上) を受けるスペースの割合を指します
グレア解析
見る方向別に不快な明るさを把握する
学生の中間発表を聞く
一部学生の発表内容を。江戸東京建物園の建物の改修案。温熱や光の解析で、どのように改修するか。
何度か学生の発表を聞く機会がありますが、毎回毎回、学生のレベルが上がっていて驚くばかりです。
Kさん
網島家改修。移築。
Fさん
子宝湯改修。銭湯→美術館に。
高瀬先生によるFlowDesignerの講義
特定日時の温熱環境で、空調計画・外皮計画ができているか。室内の温度分布をみて確認するためのツール。
熱負荷計算のみでは、室内の温度分布は分からないので、CFDで解析。
解析用設定の方法
ライノセラスからフローデザイナーに取り込むための3Dモデルの作成手順
CFDの特徴
得意:室内の気流・温度分布の確認
不得意:年間解析
以上、今まで学んできたダイジェスト版でした。
10合目まで突き進むことも大事だが、みんなで8合目までいくボトムアップも大切。それぞれ役割を担って、住宅業界をより豊かにしていかなければなりません。
今後も引き続き発信していきたいと思います。
最後に、毎回いく社食での記念写真。ここでの話も非常に学びが多く、貴重な時間です。
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