神戸の防災センターを訪れて――忘れてはいけない記憶と、これからのこと

先日、神戸の「人と防災未来センター」を訪れました。
阪神・淡路大震災については、これまでにもニュースや本で知っていましたが、「知っていること」と「向き合うこと」はまったく別なのだと、入ってすぐに感じました。

館内で流れる当時の映像や、被災直後の街の写真を見た瞬間、不安や恐怖が一気に押し寄せてきました。暗闇の中で揺れる映像、炎に包まれた街、崩れ落ちた家屋…。
これは遠い過去の出来事ではなく、実際にこの場所で起きた現実なのだと、強く突きつけられた気がします。

復興の道のりで迫られた、重い選択

展示の中で特に印象に残ったのは、復興の過程で人々が直面した「選択」の数々でした。
被災したマンションを建て替えるのか、それとも補修するのか。費用の問題、住民同士の意見の違い、年齢や将来の暮らし…。どれも簡単に答えが出るものではなく、悩み抜いた末の決断だったことが伝わってきました。

復興公営住宅についても、現実は決して明るい話ばかりではありませんでした。家賃減免制度には差があり、「この先、家賃は上がるのだろうか」「老後もここで暮らせるのだろうか」といった不安を抱えながら暮らしていた方が多かったそうです。
住む場所があることと、安心して暮らせることは、同じではないのだと考えさせられました。

復興を支えた人たちの、報われにくい現実

復興工事を担った工務店の方の言葉も、心に残っています。
「やってきた仕事に悔いはない。でも、正直で真面目なだけでは仕事ができない」
そう語りながら、自己破産に追い込まれたという話は、復興の裏側にあった厳しい現実を教えてくれました。善意だけでは成り立たない社会の構造に、言葉を失いました。

仮設住宅での生活についての展示も印象的でした。生活相談で最も多く寄せられたのは、意外にも近隣トラブルだったそうです。慣れない環境、強いストレス、不安な気持ち。良好なコミュニティができるまでには、多くの時間が必要だったとのことです。

数字と声が語る、震災当時の現実

避難所には、ピーク時で31万人もの人が押し寄せました。
街には粉塵が舞い、アスベストなどの有害物質も漂っていたといいます。
展示されていた当時の人々の声――「寒かった」「怖かった」「家に帰りたかった」――その一つ一つが、震災の現実を静かに、でも確かに伝えていました。

学びながら考えさせられる場所

神戸の防災センターは、ただ悲惨な出来事を伝えるだけの場所ではありません。
地震のメカニズムや、災害時に取るべき行動を○×クイズ形式で学べる展示もあり、大人でも思わず考え込んでしまいます。「知っているつもり」だった防災知識が、実は曖昧だったことに気づかされました。

災害があったことを忘れず、教訓として心に刻むこと。
そして、災害に強いまちづくりを続けていかなければならない――そんな思いを、自然と抱かせてくれる施設でした。

過去の出来事として片づけるのではなく、これからの自分たちの暮らしにつなげていく。
神戸の防災センターは、その大切さを静かに教えてくれる場所だと思います。

神戸市防災センター(人と防災未来センター)基本情報

  • 名称:人と防災未来センター
  • 所在地:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5-2
  • アクセス
    • 阪神電車「岩屋駅」から徒歩約10分
    • JR「灘駅」から徒歩約12分
  • 開館時間:9:30〜17:30(最終入館 16:30)
  • 休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
  • 入館料:大人・大学生 有料/高校生以下 無料(※変更の場合あり)

※最新の開館情報や料金は、公式サイトでの確認をおすすめします。

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