経済設計と施工の両立を目指して @構造計画スペシャリストMTG

先日開催された構造計画スペシャリストミーティングで、野澤工務店の野澤万里さんが、自ら手掛けた施工事例をもとに行ったレビュー。構造設計と施工現場での工夫について具体的な手順や課題が共有され、経済設計の施工の効率化を追求する取り組みについて意見交換をしました。

野澤工務店について

私は野澤さんと昨年11月に出会い、この1年で非常に濃い付き合いをしています。「環境塾」や「空調講座」など、一緒に学んでおりいつも刺激をもらえる仲間です。

野澤さんは、祖父の代から続く大工の家系で、大工と設計を行っています。従来の大工請負から工務店へと成長し、2年前には「構造塾」に参加。構造計画ルールを設計に落とし込み、実践を重ねています。

「構造計画を意識すると、プランが真四角になりがち」という課題に対し、構造と意匠を両立する挑戦を行っています。その成果の一つが、奈良県での新築物件です。

外観パース

構造区画・柱

奈良県新築住宅の概要と工夫

この物件は、基礎工事を終え、上棟を迎える段階(12月中旬)にあります。特に注目すべきポイントは以下の通りです。

①耐力壁を最小限に抑えた構造計画
建物の長寿命化と住環境の柔軟性を実現するスケルトンインフィル設計のため、必要最低限の耐力壁で構造設計。

②床下空調システムに対応した基礎設計
床下空調システムを導入するために、基礎の立ち上がりを極力抑えた設計。
環境塾で学んだラファエル設計(栃木)の神長さんの空調方式を取り入れた物件かな?

③水平構面を連続させる
2階床と下屋の水平構面を連続させることで、建物全体の構造を一体化。
下屋の水平構面(火打ち)と屋根構面(垂木)を合わせて構造設計することがあるが、あいまいな部分であり、水平構面のつづきは水平構面だけで検討(屋根構面は除外)というベストな考え方。

施工の工夫

この住宅の施工手順には、効率性を高めるためのさまざまな工夫が取り入れられています。

・耐力壁を建てた後に天井下地を施工、天井ボードを貼る前に間仕切り壁を設置。
→壁の下地を先に組むことで電気配線工事を1度で終わらせる工夫。

・間仕切り壁をたてる前にフローリングは先に貼っておく。

・30×40の野縁材、間仕切り壁部分には30×105を使用し揃える
→間柱も30×105。既製品の片引き戸の薄壁にもちょうどおさまるので使い勝手が良い。

上記画像は今回のレビューとは別物件(施工:野澤工務店)

まとめ

構造計画と施工効率化の両立を目指す実践的な取り組みの好例でした。耐震性を確保しながらも柔軟性のある住まいを提案し、さらに施工効率を高める工夫を随所に取り入れています。

構造と意匠の両立は可能で、しっかり計画段階から検討することで経済設計にも繋がります。
これらはこれからの住宅設計において重要なポイントになります。

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