今回の環境塾のプロジェクトでは、YKKapを始め、さまざまな企業のサポートを受けています。
福井コンピュータ―アーキテクト株式会社の3Dキャド、アーキトレンド(フルオプション)を無償貸与いただいていて、4月16日は福井コンピューターの松谷さんによる使い方を実演。
この機会にアーキ使いこなせるようになるというミッションもスタートしました。
今回の記事は4月23日、新住協会員が使っているQPEXについてまとめたいと思います。
最近、新住協に加盟したので、使いこなさなければと思っていた矢先に学びの機会をいただきました。
新住協とは
新住協(一般社団法人新木造住宅技術研究協議会)は、日本の住宅建築技術を開発し、住宅性能の向上を目指す民間の研究機関です。本部は仙台にあり、全国の工務店、設計事務所、建材メーカー、建材販売店、大学や公共の研究機関が参加しています。革命的な住宅技術の開発に取り組んでおり、日本の住宅産業に貢献しています。
出典: 新住協公式ウェブサイト
日本の住宅技術に貢献している団体である新住協は、外壁の通気工法など、今では当たり前のように施工されている工法を広める先駆者。
新たな住宅のあり方を提案する中で、Q1住宅という概念を打ち出し、QPEXを使用し提案しています。
新住協会員でもある神長さんが講師なので、今回はQPEXも新住協から貸与いただきました。
QPEXで学ぶ
QPEXは単なる計算ソフトではなく、勉強ができるソフト。
いきなりですが、神長さんから問題が出題されました。
◎条件
住宅面積:100㎡
Q値:2.4W/m²・K
生活熱:465W/h
日射取得熱:635W/h
外気温:10℃
室温:20℃
上記の場合の、暖房器具は何℃分の働きが必要か?
断熱構成やサッシ、外皮面積などが変わると、熱損失量が変わり、冷暖房負荷が変わる。手計算でするのは大変なので、QPEXを使用し感覚を学んでいくことが、環境塾メンバーに与えられたまず初めの課題となります。
Q値とは
熱損失係数(Q値)は断熱の指標を示す値で、外壁や天井・床などから逃げる熱量(熱損失量)の合計を延床面積で割った値のこと。値が小さいほど断熱性能が高いことを表す。
断熱の指標で、もう一つUA値というものがありますが、違いは
①Q値は換気の熱損失も含み、UA値は換気の熱損失は含まない
②Q値は床面積をもとに算出、UA値は外皮面積をもとに算出
このように、Q値とUA値は、どちらも断熱性能を示す指標ですが、計算方法や含まれる項目が異なります。
Qa値について
総熱損失係数(Qa)とは、建物の断熱性能を評価する指標で、建物の外皮(壁、屋根、床など)を通じて失われる熱エネルギーの量を示す。
Q値×床面積=Qaを算出することができる。
このQa値は温度に変換することができます。
先ほどの問題の生活熱・日射取得熱を変換する。
生活熱:465W/h ÷ Qa = 〇〇℃
日射取得熱:635W/h ÷ Qa = 〇〇℃
室温20℃を保つためには、10℃の暖房熱が必要(外気10℃)。
暖房熱10℃から、生活熱・日射熱を差し引いた分だけ、暖房器具が働かなければならない。ということになります。この暖房熱を減らすことが、省エネに直結することになります。
自然温度差を知る
自然温度差とは、冷暖房を使用しないときの外気温と室温の温度差のこと。生活熱や日射取得熱で室温は暖房を使用しなくても上昇します。
自然温度差が大きければ大きいほど、無暖房でも室温が高くなる=省エネ住宅ということになります。
少し難しくなってきたので、詳細の説明は割愛しますが(笑)
Q値と自然温度差を知ると何ができるかというと
●Q値2.4の場合
2.4(Q値)×100(床面積)=240(Qa)
465(生活熱)÷240(Qa)=1.93℃
635(日射熱)÷240(Qa)=2.64℃
20℃(外気温)ー10℃(室温)ー1.93℃(生活熱)ー2.64℃(日射熱)=5.43℃
Q値2.4の場合、暖房器具が5.43℃働くことで、室温20℃を保つことが可能。
ここでQ値の値を良く小さくしてみると(断熱性能を良くすると)
●Q値1.0の場合
1.0(Q値)×100(床面積)=100(Qa)
465(生活熱)÷100(Qa)=4.65℃
635(日射熱)÷100(Qa)=6.35℃
20℃(外気温)ー10℃(室温)ー4.65℃(生活熱)ー6.35℃(日射熱)=ー1.0℃
Q値1.0の場合、無暖房で室温21℃を保つことが可能
同じ大きさの建物でもQ値が違うと大きく変わってきますね。
断熱の指標として主に使われているのがUA値ですが(断熱等級もUA値で決まる)、実際室温を20℃保つために必要な暖房熱を出すための計算にはUA値という数字は一切登場せず、Q値と自然温度差で計算をします。
冬は暖かいが、夏は暑くなる!?
たまにSNSで、「高気密住宅なのに夏が暑い」という内容をみかけます。
これは間違いではなく、冬場、自然温度差が大きければ大きいほど暖房が不要になりますが、夏は自然温度差が大きいと冷房負荷が増えます(その分エアコンが頑張らなければならなくなります)
理想は冬は自然温度差を大きく、夏は小さくすること。が求められます。
自然温度差を小さくするためには
●日射遮蔽:夏場は日差しを遮る
●通風利用:中間期は通風を利用する
それらを手計算するのは大変なので、QPEXを利用しながら設計を進めます。
2022年10月に断熱等級6・7が新たに設定され、UA値に注目が集まっていますが、温暖化による夏の暑さや、光熱費が高騰が問題になっている今、冷暖房負荷を軽減させる設計が求められます。
そして、勉強の後は皆で会食。翌朝打合せがあり終電で帰るため、40分程度しか顔が出せず…帰り際にパシャリ!ただ飲んでるように見えますが、この時間もめっちゃ勉強になるんですよね~貴重な時間です。
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