エコハウスを「家の一生」で考える|建てる・住む・維持するまで設計する
RAYm’sが考えるエコハウスとは、断熱性能を高めたり、省エネ設備を増やしたりするだけの住宅ではありません。家を「建てる時・住む時・維持する時」まで一生の時間軸で考え、材料・エネルギー・設備・修繕の無駄を設計によって減らす住宅です。
2026年8月、IHPC『実践エコハウスセミナー』に登壇しました
今回、私がお話ししたテーマは、
「家の一生で考えるエコ」です。
エコハウスというと、
- 高断熱・高気密
- 太陽光発電
- 蓄電池
- 高性能な住宅設備
- 自然素材
といったものをイメージされる方も多いと思います。
もちろん、これらもエコハウスをつくる大切な要素です。
しかし今回お伝えしたかったのは、設備や性能を「足していくエコ」だけではありません。
建てる時のエコ。
住み続ける時のエコ。
維持する時のエコ。
家の一生を通して無駄を減らし、建築費・光熱費・修繕更新費まで含めたライフサイクルコストを考える。
設備を増やすだけではなく、設計によって、家の一生をエコにする。そんな話をさせていただきました。

性能の数値だけでは差が見えにくくなってきた
現在の住宅業界では、
UA値、C値、断熱等級、耐震等級。
こうした住宅性能を表す数値を目にする機会が増えました。
これは住宅業界全体の性能が向上しているという意味で、とても良いことだと思います。
一方で、性能が当たり前になってくるほど、数値だけでは住宅の違いが分かりにくくなってきます。
もちろん、性能を軽視しているわけではありません。
耐震性能も、断熱性能も、気密性能も大切です。
ただ、私たちが考えているのは、その先です。
その性能を、暮らしの価値にどうつなげるのか。
RAYm’sでは、
「温熱」「構造」「空調」「素材」「インテリア」をそれぞれ別々に考えるのではなく、一つの住まいとして横断的に設計することを大切にしています。
性能の数値そのものを目的にするのではなく、
性能を使って、どんな暮らしをつくるのか。そこまで考えることが設計だと思っています。
① 建てる時のエコ|構造を整えて、材料と施工の無駄を減らす
最初は「建てる時」のエコです。
構造については、許容応力度計算による耐震等級3を基本としています。
ただし、耐震等級3を取得できれば、それで構造設計が終わるわけではありません。
同じ耐震等級3でも、構造計画によって中身は大きく変わります。
間取りを先に決め、後から構造計算によって力技で成立させようとすると、大きな梁や多くの補強部材が必要になることがあります。
一方、基本設計の段階から構造区画を整え、柱や壁、梁の位置を合理的に計画しておけば、建物にかかる力を素直に基礎まで流すことができます。
例えば、講演では2つの耐震等級3の住宅を比較しました。
片方は梁成420mm、450mmといった大きな梁が必要になっているのに対し、もう片方は構造計画を整理することで、必要以上に大きな部材を使わずに成立しています。
耐震性能を落として材料を減らすのではありません。
耐震等級3を確保した上で、
構造を整えることで、不要な材料を使わない。
これが「建てる時のエコ」です。
スケルトン・インフィルは施工の無駄も減らせる
構造計画を整えることは、材料だけでなく施工にもつながります。
私たちが取り組んでいるのが、スケルトン・インフィルの考え方です。
構造を担う部分と、将来変更できる間仕切りや設備などを整理して設計します。
例えば床を先に施工し、その後に構造を負担しない間仕切り壁を施工できれば、フローリングを細かく切って納める作業なども減らせます。
材料のロスが減り、施工もシンプルになります。
さらに将来、家族構成や暮らし方が変わった時にも、構造に影響を与えず間取りを変更しやすくなります。
材料を減らす。施工の手間を減らす。そして将来も使い続けやすくする。
構造計画は耐震性だけではなく、家のライフサイクル全体にも関係しています。
② 住む時のエコ|高断熱の先に「空調計画」がある
次は「住んでいる時」のエコです。
ここでは、高断熱・高気密が土台になります。
ただし、断熱性能を高くすれば、それだけで省エネで快適な住宅になるわけではありません。
大切なのは、その性能を空調計画につなげることです。
例えば夏であれば、
- 日射遮蔽
- 熱負荷計算
- エアコン能力の選定
- 除湿
- 空気の通り道
- 換気計画
まで考えます。
まず、窓の外側でできるだけ日射を遮る。
その上で、その家にどれくらいの熱が入ってくるのかを計算する。
そして必要な冷房能力に合わせてエアコンを選び、冷やした空気が家の中をどう動くのかまで設計する。
私たちが目指しているのは、設備をたくさん設置することではありません。
例えばエアコンを2台設置しても、夏と冬はそれぞれ基本的に1台を中心に運転する。
住宅性能と空気の流れを整えることで、できるだけシンプルな設備で快適な環境をつくります。
高性能な設備を増やすことではなく、必要な設備を必要なだけ使う。
これも一つのエコだと考えています。
実際の光熱費はどうなるのか
講演では、実際に設計した住宅のデータも紹介しました。
2026年7月の実測では、
- 太陽光発電量:746.5kWh
- 自家消費量:229.6kWh
- 売電量:516.9kWh
- 買電量:164.0kWh
となりました。
買電31円/kWh、売電15円/kWhとして試算すると、
自家消費による節約効果は約7,118円。
売電収入は約7,754円。
一方、購入した電気は約5,084円です。
売電収入と買電料金だけを比較すると、約2,670円のプラスとなりました。
もちろん、太陽光発電を載せれば、それだけでこうした結果になるわけではありません。
そもそもの冷暖房負荷を減らし、少ないエネルギーで快適に暮らせる住宅をつくった上で、太陽光発電を組み合わせる。
「たくさん発電する」だけでなく、「そもそも使うエネルギーを減らす」。
ここが重要だと考えています。
③ 維持する時のエコ|交換と廃棄をできるだけ減らす
そして最後が「維持する時」のエコです。
住宅は、建てた時だけにお金がかかるものではありません。
外壁、屋根、給湯器、エアコン、水まわりなど、長く暮らしていれば必ず修繕や交換が発生します。
だからこそ設計段階から、
「30年後、40年後に何を交換することになるのか」
まで考えておく必要があります。
例えば、
- 軒を適切に出して外壁や開口部を雨から守る
- 耐久性のある素材を選ぶ
- メンテナンスしやすい納まりにする
- 設備を必要以上に複雑にしない
- 将来交換できる設備計画にする
といったことです。
高性能な専用設備をたくさん入れることが、必ずしも長期的なエコになるとは限りません。
設備には寿命があります。
交換する時には、新しい設備をつくる資源も、古い設備を廃棄するエネルギーも必要になります。
だから、
長く使えるものを選び、設備はできるだけシンプルにする。
交換や廃棄そのものを減らすことも、大切なエコだと思っています。
「建築費」だけでは家の価格は分からない
ここまでの話を一つにつなげると、最終的にはライフサイクルコスト(LCC)という考え方になります。
家にかかるお金は、最初の建築費だけではありません。
建てる時
→ 構造計画を整えて、材料や施工の無駄を減らす。
住んでいる時
→ 温熱・空調計画によって、使用するエネルギーを減らす。
維持する時
→ 耐久性と設備計画によって、修繕・交換・廃棄を減らす。
つまり、
建築費+光熱費+修繕更新費まで含めて家の一生を考える必要があります。
建築時に少し安い家が、30年後にも安いとは限りません。
反対に、最初に性能や耐久性へ適切に投資した住宅が、長い目で見れば経済的になることもあります。
だからこそ「坪単価はいくらか」だけではなく、
その家に一生でいくらかかるのか。
という視点が、これからますます重要になると思います。
設備を足すだけではなく、設計でエコにする
今回の講演で一番お伝えしたかったのは、
エコハウス=高性能な設備をたくさん搭載した家ではないということです。
構造を整えれば、無駄な材料を減らせる。
断熱・気密・日射・空調を整えれば、必要な設備やエネルギーを減らせる。
耐久性やメンテナンスまで考えれば、将来の交換や廃棄を減らせる。
つまり、
「建てる・住む・維持する」のすべてを設計することで、家の一生の無駄を減らすことができる。
これが、私たちが考える「家の一生で考えるエコ」です。
そして、「つくる力」だけでは足りない
私の講演後は、南さんによる基調講演がありました。
テーマは、
「何のためのエコハウスなのか」
「エコロジーをビジネスにする」
その中で特に印象に残ったのが、
「ちゃんと伝えること」の大切さです。
どれだけ良い設計をしても、どれだけ高い性能を実現しても、その意味がお客様に伝わらなければ選んでいただくことはできません。
これは私自身も、以前から大切にしていることです。
例えば「UA値0.○○です」と伝えるだけでは、それによって暮らしがどう変わるのかは伝わりません。
耐震等級3も同じです。
空調計画も同じです。
スペックを説明するだけではなく、
「それが、あなたの暮らしにとってどんな価値になるのか」
まで伝える必要があります。
つくる力と、伝える力。
その両方があって初めて、本当に価値のあるエコハウスが広がっていくのだと思います。
8月25日|「性能は『伝える順番』で価値が変わる」
そしてちょうど、8月25日にはRAYm’s × ORIZUMで、工務店・住宅会社の方向けに「伝え方」をテーマにしたオンラインセミナーを開催します。
テーマは、
「性能は『伝える順番』で価値が変わる」
耐震・断熱・空調。
住宅会社側からすると、どれも説明したい大切な性能です。
しかし、スペックをそのまま並べるだけでは、お客様にとって「自分に関係のある話」にならないことがあります。
では、どういう順番で伝えれば、
「性能の説明」から「知って得する話」へ変えられるのか。
今回のIHPC「実践エコハウスセミナー」でお話しした「家の一生で考えるエコ」ともつながる内容です。
2026年8月25日(火)17:00〜18:30
オンライン開催/参加無料
ご興味のある工務店・住宅会社の方は、ぜひご参加ください。
まとめ|エコハウスは「家の一生」で考える
エコハウスを考える時、どうしてもUA値や断熱等級、太陽光発電といった分かりやすい性能や設備に目が向きます。
もちろん、それらは大切です。
しかし、本当の意味でエコな住宅を考えるのであれば、
建てる時に、どれだけ無駄を減らせるか。
住んでいる時に、どれだけ少ないエネルギーで快適に暮らせるか。
維持する時に、どれだけ交換や廃棄を減らせるか。
そこまで考える必要があります。
性能の数値は、そのための手段です。
設備も、そのための手段です。
家を一生という時間軸で捉え、ライフサイクルコストまで含めて設計する。
設備を足すことでエコにするだけではなく、設計によって、家の一生をエコにする。
今回のIHPC「実践エコハウスセミナー」では、そんな考え方をお話しさせていただきました。
